試練

開業して一年ほど過ぎた頃、国王に異変が起き始めました。


あれだけおしゃべりだった国王の口数が減ってきたのです。


食事の量も減ってまいりました。


どこか具合が悪いのではないですか?


私の質問に、国王が答えました。


鬱になりそう・・・


どうしたものかと、知人にも相談いたしました。


男が《家》を建てるというのは、大変なことなのだ。
これから何十年とローンを支払って行かなければならない。
その重責に堪えられるかどうかだ。


そのような内容だったと思います。


自営業ですから、社長の国王がいなければ仕事になりません。
夜、仕事が終わって自宅のソファに座り、じっと手を見る国王。


実は国王、地域では有名な手相家なのでした。


自分の未来を考えながら、仕事を続けていく気力を確認しているかの
ようでした。


連休に、海辺の町までいきましょう。


気分転換に、新幹線に乗って出かけてみました。
潮風に当たりながら、国王の気持ちを探ってみるものの、まだ私には、
どうすればいいのかわかりませんでした。


その頃の様子を垣間見れる一冊のノート。


表紙に、《ありがとうノート》と書かれています。


私と国王の《ありがとう》を綴ったものです。


国王の覧を見ると、

〇 お団子ありがとう。
〇 おかき、ありがとう。
〇 ごはんありがとう。
〇 おにぎりありがとう。
〇 チョコレートありがとう。
       ・
       ・
       ・
       ・
その後、「おにぎりありがとう」と「うどんありがとう」が、果てしなく
続いておりました。


他にもたくさん話したり、出かけたりしたのですが、国王には「おにぎり」
と「うどん」しか見えなかったようでした。


あの頃はしんどかったですね。


国王に言いましたら、


そんなことあったか?


と、すっかり忘れておられるようでした。


しかし、私は忘れられません。
国王が、最後の力!?を振り絞るように、私に言いました。


これから一日1000回。《愛してる》とオレに言え!


多少の抵抗感はありましたが、生来真面目な私は実行することにいたしました。


しかし、1000回なんて、数えられません。


ふと思いつき、ホームセンターでカウンター(数をカウントする機械)を購入し、
国王が見えないように携帯しながら、やってみました。


すると、驚くほどの効き目がありました。


以前読んだ本に書いておりましたが、


【どんなに苦難な人生だったとしても、最期に愛をささやかれたら幸せに旅立てる】


という一文が心をよぎりました。


引き出しにしまってたカウンター。
最近全く、出番がありませんでしたが、手にとってみると、なんと、【1000】
で、止まっておりました。(-.-)


ゼロにもどして、またチャレンジしてみようかな。(゜_゜)


秋間近。国王はまだまだ現役で、仕事しております。 




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