旅立ち

受験勉強から解放された後のことです。


目標が無くなった時点で、またまた問題が起き始めておりました。


国王が、見たことも無い代物を、次々に取り寄せはじめたのです。


何ですかこれ?


始めに届いた物は、口で説明するのがかなり困難なのですが、なんでも

“ドクター中松”氏が発明したという、フライングシューズというものでした。


履いてみるから見てろ。


スキーブーツのようなものの靴底に、大きなバネが接着されていました。


なぜ、このような物を・・?


という私の質問に対し、国王の返事はこうでした。


これを履くと、身長が30cmは高くなるだろ。


(?。?)


私はすっかり忘れていたのですが、ロミさん(「すてきな一家」にて紹介)が、

夫のワンさんと歩いている時、私がその身長の差がかわいくて、ずいぶん

あこがれていたことを、国王はおぼえていたのでした。


でも、そのような目的で作られた靴ではないと思います。


という私の言葉には聞く耳持たずで、何度か山道を二人で歩きました。


しかし、『大男を見た!』という噂が、まことしやかに流れ始めましたので、

すぐに、外での使用は自粛することになりました。


また、睡眠痩身具、座ってるだけで頭が良くなるイス、性格が良くなるお香

等々。

 

緊縮財政の中、国王の買い物は止まることを知らず、どうしたものかと頭を

悩ませていた矢先のこと。


国王の友人であるジジイさん(J.R.財団にて紹介)から電話がありました。


何でも、ジジイさん、

地元で開業するので、国王に手伝って欲しいということでした。


国王は、何日間か、真剣に考えておりました。


実は、町での生活も3年目を迎え、町人たちとの交流も深まっておりました。


国王は休みの日に、お年寄りで歯科医院まで来られない方のために、訪問診療

も始めてましたし、私は、町の子供たちに、勉強を教えてあげたりして

いたからです。


しかし、娯楽施設はパチンコのみ。

しかも、週休4日は変わらずです。

空いた時間は、パソコンでの「宝探し」(国王にとって)に費やされ、

購入した掘り出し物が、もはや押し入れの空間を埋め尽くしそうな事態

なのでした。


で、ここで一つ、新天地で仕切り直しをしようということとなり、

ジジイさんの依頼を受けることにいたしました。



決まると早いもので、歯科医院のオーナーの方に事情を話し、その三か月後

には、町を離れることとなりました。


ただ、ロミさんに話すのが、一番辛いことでした。


何度か自宅に呼ばれ、ロミさんのお得意料理をご馳走になりながら、

私たちが出来ることと言えば、記念写真を撮り、プレゼンとさせて頂く

ことくらいでした。


何しろ、まだ残っているローンがありましたし、新たなローンも加わり、

相変わらず質素な生活をしてましたので。(-.-)



そしていよいよ町を離れる日、ロミさんの家に挨拶に行くと、

小学生の男の子、フォールくんが、私にお手紙を渡してくれました。


ありがとう。(;_;)


そう言って別れた後、荷物を詰め込んだソアラ様に乗り込み、封を切りました。


いろんな思い出が頭の中を通り過ぎていきました。


よく続いたものだと密かに思いながら。(-.-)


手紙を開くと、硬貨が2枚、ぽろりと落ちました。


あ、お金が入ってます。


200円でした。


そして、手紙には大きな字で、


お せ ん べ つ


と書かれてました。


え!? なぜ・・・。


と不思議がる私に、国王が言いました。


君がいつか、財布の中に200円しか入ってないって、言ったことがあるだろ。


さすが国王。

本当に、記憶力だけは抜群です。


そうなのです。

「親の愛」でも書きましたが、そのような状態が、月に一回はありました。


それを聞いてたってことですか?


国王にいいながら、ちょっと、目頭が熱くなる私なのでした。


その200円。

今でも使えずに、封筒と一緒に机の中にしまっています。


いつか、生活に困窮した時に、使わせていただこうと思いながら (;_;)

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